原因はわかってる。


変化に気づいたのは、
アイツがこの家に出入りするようになってから…だから。


あの夢も。

襲ってくる不安感も。


すべての原因は…



「航くん?」



名前を呼ばれて、顔を上げれば……



「……っ!」



ふいに重なった唇。

軽く、ごく短いものだったけど明らかに…



「み…さき?」



さっきはあんなに嫌がってたくせに。

今、彼女はいとも簡単に、自分からキスをした。


急に何…って言うか、
なんで、俺のほうが動揺しちゃってるんだろう?


カアッとして、慌てて口を覆った俺の掌をどけて、

しっかりと俺の顔を両手で包み込みながら、再び唇を重ねてくる彼女。



「ちょっ…みさ…」



ぎこちないながらも、
深く甘く…いつも俺がしている手順で進むキス。

う…わぁ。


“する”のと“される”のって、こんなに違うもんなんだ?


冷静に考えながらも、確実に溺れていって。


気づいたときには……










「嫌なこと、忘れられたでしょう?」