「……え?どーいう「さ、喉も潤ったし、寝よう!」
彼女の言葉を遮って、自分の胸に押し付けるように抱きしめて。
航はくるっと向きを変えた。
そして、足早にキッチンを出ていく。
「……おやすみーっ」
最後に、とって付けたような“挨拶”を残して。
……わざと、か。
俺がいるところで、
俺がいるから、
アイツは“わざと”あんなことをした。
見せつけるために。
知らしめるために。
「彼女は俺のもの」だと、主張するため、に。
……馬鹿だよなぁ。
そんなことしなくても大丈夫なのに。
俺は、お前から彼女を盗ったりなんかしないよ。
いや…、盗れるわけがない。
それは、彼女を見ればわかることじゃないか。
彼女が俺を必要とすることは、もうない。
悲しいけど、
俺たちの時間が重なることはもうない。
あのとき、
すべてが終わってしまったのだから―――