低い声が響くと同時に、
パチン、と音がして。
一瞬にして明るくなるキッチン。
「こんな暗がりで…“ふたりで”何してんの?」
冗談めいた言い方。
でも、俺に向けられた視線はぞっとするほど鋭い。
「航くん、起きてたの?」
ゆっくりと航の傍に歩み寄る彼女。
「もしかして、私が起こしちゃった?」
「……や、違うよ?」
申し訳なさそうに見上げるその身体を引き寄せて、
「俺も、喉渇いちゃってさ。」
しっかり自分の腕に閉じ込めてから、彼女が握っていたペットボトルを口にした。
「……でも、来てみてよかった。」
小さく呟いた、棘だらけの言葉は彼女の耳に届いただろうか?
「みさきさぁ、
“お客さん”が来てるときは、こんな格好でうろうろしちゃダメじゃん。」
「えっ?」
「これ、結構きわどいよ?……男にとっては、さ。」
言いながら、ちらりと俺のほうを見て。
「さっきの“跡”も、しっかり見られちゃったよ?
せっかく“見なかったふり”してくれてたのに……」