「えっ…?」



俺の言葉を聞いて、すぐさまパッと顔を上げたみさき。

もう涙でぐちゃぐちゃだ。


でも…

俺の瞳には、この上なく愛しく映る。




「なんで全部言っちゃうのかな?」



みさきの傍にしゃがみ込んで、その涙に手を伸ばす。

今度はもう、引っ込めたりはしない。


ちゃんと指で拭ってやりながら、みさきの顔を覗き込んだ。



「謝るのは俺のほうだし…」


「え…?」


「“お願い”するのも俺のほう。」



傍にいたい。

傍にいてほしい。


想いはすべて、同じだから。



「“好きだ”って言わなきゃいけないのも、

俺のほう、なんだよ?」




言いたいこととか。

言わなくちゃいけないこととか。


いろいろたくさんあるはずなのに。


俺の頭は働かなくて。


口から出たのは…



「好きだ。」



一番大事なひと言だけ。




それだけ言って、

俺はみさきを思いっきり抱きしめた。




「航く…」