「何言って…「私、何も知らなかったから。」
俯いたまま。
手元の布団を握りしめて、みさきは続ける。
「何も気づかなかったし、何もわかってなかった。」
「みさき…?」
「航くんのことも、航くんのお家のことも…先輩のこと、も。」
……え?
それって…
「なのに、あんなこと言って…航くんを傷つけちゃったから。」
“あんなこと”…?
「航くんが、私を好きじゃなくなったとしても仕方ないと思う。」
好きじゃない、なんて。
何を言ってるんだろう?
たとえ、みさきが俺を嫌いになることはあっても、
俺がみさきを嫌いになることなんて、絶対にあり得ないのに…
そもそも、家のことって…
みさきは、一体何を…
「でもね、無理なの。」
わけがわからない俺を無視したまま、みさきの独白は続く。
「たとえ、航くんが私のことを顔も見たくないくらいに嫌いになったとしても…」
「だから、それは…」
「私は航くんがいないとダメなの。傍に…いてほしいの。」
……え?
「……航くんじゃなきゃ、ダメなんだよ。」