「ここじゃ、治らないわよ。」



――保健室。


扉を開けて。

中に入るなり、振り向きもせずにおばちゃんは言った。



「…へっ?」



まだ何も言ってないし、名前すら名乗ってないんですけど…


おばちゃんを見れば、
入り口…つまり、俺のほうに背を向けて座っていて。

何やら、仕事中のようで…



「あの…」



俺はただ、寝かせてほしいだけなんだけどなぁ。


思いつつ、ゆっくりとおばちゃんのほうに近づいて行けば…



「だから、ここは“専門外”。私には治せないわよ?…水沢くん。」


「えっ?」



やっぱり俺だってわかってたのか…

さすがは年の功。

背中にも目があるんじゃないのか?…っと、

そんな場合じゃなくて。



「治すとかじゃなくて、ベットを…っ、ちょっ…」



“利用記録”に手を伸ばしたところで、さっとおばちゃんに奪われてしまった。



「何?使用拒否?
俺、今日は本当に具合悪いんだけど…」



むっとして、おばちゃんを睨んでみれば…



「“恋の病”は、寝てても治らないでしょ。」