「……悟。」



また、言葉に詰まる。


だって、まさか…

コイツにこんなこと言われるなんて…



「あ、カンチガイするなよ?」



俺の視線に気づいたのか、

新しいパンに手を伸ばしながら悟はこっちを見た。



「俺は、あくまで先輩の“ファン”だから。」


「は…?」


「みさき先輩に、幸せでいてほしいだけだからな。」



もぐもぐと、食べながら続ける。



「だから、先輩がイヤだって言ったら、無理強いはするなよ?」


「…はいっ?」


「その時は、潔く身を引け。それが先輩のためだ。」



……コイツ。


一瞬でも、感動して損した。



「大丈夫だって。」



パンを平らげて、にかっと笑うと、



「世の中に、“女”は先輩1人じゃない。」



あっさりと言い放った。



「はっ?」


「確かに、先輩より“いい女”はいないかもしれないけど、でも…」



なんか、つき合うのがバカバカしくなってきた。

真面目なの?
からかってんの?

どっち?



「寂しくなったら、紹介してやる…って、おい!どこに行くんだよっ?」



まだまだ続ける気満々の悟を無視して、俺は立ち上がった。




悟の言うとおり、

保健室にでも行こう。