「先輩は、ずっとつらかったのに…」



自分がそうだから。

先輩も、とっくに吹っ切れてると思ってた。


あのことなんて忘れて。

私のことなんて忘れて。


先輩の“居場所”を見つけて…


普通に、元気に、
生活しているものだとばかり思っていた。



「私は、全然気づきもしないで…」



私は、先輩の“痛み”を理解できていなかったんだ。

それは“1人で”乗り越えられるものじゃない。



私がすぐに、あの事件から立ち直れたのは…

現実に戻れたのは…



「……よかったよ。」



言葉が出ずに俯いてしまった私に向けられた、先輩のやさしい声。



「立花が、俺みたいにならなくてよかった。」


「…え?」



顔を上げれば、

私から視線をそらしつつも、微笑んでいる先輩がいて。



「“居場所”を見つけてくれてよかった。」


「あ…」


「航に出会ってくれて…
本当によかった。」