――私は、最低だ。




「えっ?立花?」


「ごめ…なさっ」


「なんで、泣くの?」



気づいたときには、頬をつたっていた涙。


こんなときに出てくるなんて…なんて卑怯な。

ますます、自分を呪いたくなる。



「…私、何も知らなくて」


「え?」


「自分のことばっかりで…先輩のこと…」



傷ついているのは、自分だけだと思ってた。


ついさっきまで。
心のどこかで、ずっと。

こんなに辛いのは、先輩のせいだと思ってた。


先輩のせい。

あのとき、先輩が現れたせい。


あんなことがなければ、
私は今、幸せに……



「先輩も苦しかったんですよね?」



なんで、忘れていたんだろう。


私は“今”しか見えていなかった。


あの“事件”の後の記憶だけが鮮明で。

それ以前の過去を振り返ることなんてしなかった。

考えたこともなかった。



でも、

“あんなこと”をしてしまった、そもそもの理由。

それは…



「先輩はあの後もずっと、

“居場所”を探して続けていたんですね。」