私の視線に気づいたのか、先輩はテキストへと手を伸ばした。



「最初は経営学部だったんだけど…途中で変えたんだ。」



専攻替え…

そっか…。だから、人よりも努力してるんだ。

えらいなぁ。


でも…



「なんで、心理学なんですか?」



なんとなく、意外だ。

お家のことを考えたら、“経営”っていうのは納得できるけど…



「…救ってもらったから。」


「え…?」


「俺も…誰かを救えるようになりたかったんだ。」



“救う”……?

何のことだろう?


不思議に思いながらも、次の言葉を待つ私。

手元に視線を置いたまま、先輩はぽつりと呟いた。



「カウンセラーに、なりたいんだ。」


「カウンセラー…?」


「そう。“心理カウンセラー”」



頷いて、ゆっくりと私のほうに向き直る先輩。



「すごくお世話になった先生がいて…本当はその人みたいに“医者”になりたかったんだけど…」


「え?」


「“医学部”は許してもらえなかったから…“経営学部”を受けて、こっそり転向したんだ。」