「今まで外したことなかったのに…どうしたの?」
「………。」
「大事なものじゃなくなっちゃったの?」
見てた…んだ?
まさか、そこまで気づかれてるとは思わなかった。
特に誰にも聞かれなかったし。
私もあえて、気にしなかったんだけど…
薬指のシルバーリング。
それは、航くんがくれたもの。
「絶対に外しちゃダメだから」って。
――春。
高校の卒業式の日にもらったんだ。
「これを外すのは、“本物”と交換するときだからね?」
航くんは言った。
「だから、俺が外すまではちゃんとつけておくこと!
体の一部だと思って…ね?」
それは、ぴったりと、
まるで誂えたみたいに私の指にはまった。
それこそ、本当に“体の一部”みたいに。
だから、
もうずっと。
つけてることさえ忘れそうになるくらいだったわけだけど…
その存在感は抜群だった。