「……!」
航くんの名前を聞いて、再び意識が現実に戻る。
倉田くんは私の同級生でもあるけど、
航くんの部活の先輩でもあるから。
茉奈の言葉は、何気ない当たり前の一言だったのに…
「…やっぱり、ね。」
私の瞳に溢れてきた涙に気づいた茉奈。
「航ちゃんと何かあったんでしょ?」
「……」
「何?ケンカでもした?」
やんわりと。
子供に問いかけるように聞いてくる茉奈。
「まさか“浮気”?…なわけないか。」
航ちゃんに限って、と付け足して。
茉奈は続ける。
「まぁ、いいや。
話したくないなら無理には聞かないから。」
「……?」
「結局は当人同士の問題だからね。私に口を挟む権利なんてないもん。」
ふわりと笑って。
「でも、とりあえず、
今日はここに泊まりなさい。」
「え…?」
「私が傍にいるから。
安心して泣いていいよ?」
「茉奈…」
長いつき合いだから。
茉奈は、私のことをよくわかってくれている。
「さぁ。早く片付けないと。みさきが寝るところがなくなっちゃう。」