「今日、大学に行ったら、図書館で偶然会って…」



俺の視線に気づいて、説明し始めたみさき。


焦ることなく、淡々と。



「このまま帰る、って言うから一緒に来たの。」



それは、みさき的には何でもないことで。

やましさのカケラもないんだと思う。


でも…



「…“2人”で?」



みさきに向かって、じゃなくて。


みさきを挟んで向こう側にいる“アイツ”に向かって言葉を投げる。



「大学から、ここまで。
“2人きり”で電車とバスを乗り継いで…来たんだ?」


「え…?」



案の定。

戸惑ったように、俺を見つめてくる瞳。



……ムカつく。


だって、明らかに…



「航くん…?」



無言で睨み付ける俺を、心配そうに見上げるみさき。


気づかないのか?

気づく必要なんてないのか?


そのとき初めて、
みさきの、無意識ゆえの“残酷さ”を見た気がした。



でも、何がどうあれ…



「行こう。」


「えっ?ちょっ…」



みさきの腕を掴んで。

アイツの隣をすり抜けて。


俺は“俺の”家に向かった。