「……!?」
コンコンコン、と。
乱暴なノックが聞こえたかと思えば、
ガチャリ。
ドアに手をかける音が……って。
「いい!俺たちは後で食べるからっ」
慌ててドアのほうに駆け寄って、間一髪で開けられるのを防いだ。
「そーお?」
全体重をかけて押さえ込んでいるドアの向こう。
母さんの呑気な声が聞こえる。
「じゃあ、冷蔵庫に入れておくわね?…あ。櫂が帰ってきたら、ちゃんと分けてあげるのよ?」
「ハイハイ」
「じゃあ、私は食べたら仕事に行くけど…」
とっとと行ってくれ。
まったく、なんでこうもタイミング悪いんだか…
「みさきちゃーん?」
母さんの声に、乱れた服を整えていたみさきがびくっと肩を震わせた。
「は…はいっ?」
「私ねぇ、久しぶりにアレが食べたいわ。」
「へっ?」
「みさきちゃんが作る、あのお魚の…」
「あー、ハイ。今晩作ります!」
「わぁ。嬉しい!ありがとうっ」
……一方的に。
言いたいことだけ言って。
さっさとリビングに戻って行った母さん。
何なわけ?