「……え?」
その言葉の意味を理解できずにみさきを見れば、
ひどく悲しそうな顔をしていて…
「航くんは、最近、私のこと見てないよね?」
泣きそうな声で呟いた。
「“私”じゃなくて、
“先輩”を見てるよね?」
「え…?」
俯いてしまったみさき。
覗き込もうと、顔を近づけてみるも…
「ごめっ…何でもない。」
そのまま…
表情を隠すように、俺の胸に顔を埋めてしまった。
……え?何?
「みさ…「このまま…ぎゅっとしてて。」
「へっ?」
「私も一緒に起きてるから。ずっと…抱きしめてて?」
「……?」
意味がわからない。
わからないんだけど…
ぎゅっ、と。
俺はその細い身体を抱きしめて。
みさきの腕が、自分の背中に回ったことを確認してから、目を閉じた。
諦めることが当たり前だった俺が、
初めて、諦められないものを見つけた。
頑張って頑張って、
やっと手に入れられた。
この上なく大事な“宝物”。
それは
どうやって守ったらいいんだろう――?