「……航くん?」



小さく聞こえた声に、ハッと視線を向ければ…



「大丈夫?また…眠れない?」



俺に身体を預けたまま、心配そうに見つめるみさきがいた。


……いつの間に?

ついさっきまで、腕の中で寝息を立てていたはずなのに…



「大丈夫だよ?」



無理矢理笑顔を作って、柔らかい髪を撫でてみたものの…



「…嘘。明らかに変だよ。」



その手をぎゅっと握って、みさきは睨むように俺を見据えた。



「絶対に変。この前から…ううん。夏休みに入ってから、ずっとおかしいよ。」


「そんなことない…よ。」


「あるよ!」



強い瞳で見つめられて。

思わず目をそらしそうになってしまう。

いや、でもそんなことしたら“認める”ことになっちゃうし…

どうしたらよいのかわからないまま、みさきを見つめ返せば…



「“先輩”のせい…?」



小さく動いた唇。



「…まだ、気にしてるの?」