「俺も、みさきに会いたかったんだ。」



特に、今日は。


重くて。黒くて。
目を背けたくなるくらいに醜い感情。


さっきまで、腹の中で渦巻いていた想いは、

みさきに会った瞬間、すーっと軽くなった。


“いつもの”俺に戻れたような…そんな感覚。


顔を見ただけでこれなんだから、触れたら……



「……」



無意識に、みさきの頬へと伸びていく指先。

それに気づいて、じっと俺を見つめる瞳。


このまま、
引き寄せて抱きしめて。


全部、忘れてしまいたい。


そんな衝動に駆られたけど…



「…航くん?」



ぴたっと。

触れる直前で止まった手。



「どうし「…ごめん。」



みさきから視線をそらして、慌てて手を引っ込めて。



「え…?航く…」


「シャワー、浴びてくる。」



戸惑う彼女の横をすり抜けて。

俺はバスルームへと向かった。









触ったら、いけないような気がしたんだ。


こんな空気を纏ったまま。

醜い感情が残ったまま。



みさきに触れちゃいけない。



触れたら…

きっと、気づかれてしまうから。




“本当の”俺に―――