患者さんのところだって言うから。
教えてもらった病室に向かった。
「ここ…だよな?」
最上階。
エレベーターを降りたところで一瞬戸惑った。
今までの階とは大違い。
廊下にはほとんど人気がなくて…いわゆるVIPの病室だってすぐにわかったから。
完全個室。
周囲の目が気になる有名人とか、ワガママな金持ちが泊まる、アレ。
この病院にもあったんだ?
俺なんかが気軽に入っていいのかな?
近藤さんは、
「航くんを通すように言われてるから」と、
笑顔で送り出して、普通にエレベーターに乗せてくれたけど…
気まずい。
さっさと母さんを見つけて帰ろう。
決意して、廊下を足早に歩き始めたとき。
「え……?」
タイミングよく、手前のドアがガーッと開いて。
「あ…」
出てきた人物を見て、思わず固まってしまった。
「な…んで?」
無言で見つめ合うこと数秒。
「あ、航、来てくれたのね?」