「確か、ここ…だよな?」
指定された病棟に入って、きょろきょろと見渡してみる。
診察じゃなくて入院…か。
スリッパにパジャマ姿の患者さんがちらほら。
見た感じ、比較的軽い症状の人たちみたいだ。
……とりあえず、ナースセンターを探すか。
ここでケイタイを使うわけにはいかないから。
あとは自力で母さんを探すしかない。
案内図を確認して、一歩踏み出した…とき。
「あら、航ちゃん?」
後ろから声をかけられた。
振り返ってみれば…
「久しぶりねぇ。すっかり“イケメン”になっちゃって」
にこにこ笑う、恰幅のよろしいナース姿の女性。
年は母さんと同じくらいで…あ!
「…近藤さん?」
前に、何度か会ったことがある。
母さんの同僚で友人で。
同じ“シングルマザー”仲間だと言っていた。
「お久しぶりです。あの、母は…」
挨拶もそこそこに。
きっと、この人なら知っているだろうと質問をぶつけてみれば…案の定。
「水沢さん?ああ、今は確か…」
すんなり教えてくれた。
ラッキー。