「キミの身体ってあったかい」

腕枕がちょっと鬱陶しくなった、AM6時。正哉がぽそっと耳元で呟いた。
「…36.4度。私の平均体温」
腕枕から頭を離して、一晩中続いた激しいセックスの余韻を飲み込む。


あー、正哉は私より一回り年下の20才。ピチピチで、お肌なんか取り替えたいくらい。そんな正哉とのお泊まりデートはまだたったの3回だけど、すごすぎて決まったペースで会ったりしたら、確実ノックアウト。だから「待て!」と「おすわり!」は教えてあるの。

私はベッドの脇に落ちていたバスタオルをひっかけて、すたすたとバスルームへ向かう。「寝起きの一発は!?」
との痛切な願いは空気に溶けた。同時にバスルームのドアを閉める。


熱いシャワーを思い切り頭から浴びる。身体のいろんなところが軋んだ。シャワーを下半身に当てる。痛い。あのヤロウ、優しくしろっつったのに。自宅から持ってきたシャンプー、リンス、ボディソープをポーチから出す。大体ホテルのやつは、どれも匂いが強すぎ。市販じゃ絶対売れない。などと考えてるうちに、シャワータイム終わり。


シャワーから出ると正哉はまだ全裸でベッドに横たわっていた。ふてくされた顔をして。またこのふてくされた顔が、私の母性本能をくすぐるのだ。

「ねーそれってさぁー、『もう帰ります』ってことでしょぉ?」
正哉がほっぺたを膨らまして怨めしそうにゆう。
「だって今日は平日でしょ?まーくんは学校、私は仕事。一発やってる最中に上司から電話くるのもやだし…またね!」

ストッキングは伝線してない。マニキュアははがれてない。寝癖もないしケショウのりは完璧。口紅を塗りながら支払い機でホテル代を払う。
「次いつ逢える?」
正哉の甘い声。
「また連絡するわ」
精一杯の笑顔で答える。
「待ってるからね」 ニコッとする正哉に飛び付きたくなる衝動を押さえて、明るくなった外へ踏み出した。