あたしは、その黒木雄大先輩のことを軽蔑していたのかもしれない。
だって…
あんな冷たい無愛想な人で…きいてくれないようなのが昨日あったはずなのに。
今は、一年生の憧れる先輩な優しい先輩で。
きっと、あたしは勘違いしていたのかもしれない。
きっと、勘違いをしていたんだ。
黒木雄大先輩はあたしが思ってない以上優しいのかもしれない。
そう、心で呟きながらあたしは下を向いていると
黒木先輩が明るい声で『佐倉さん?』と呼んでいるのを気付き目線を黒木雄大先輩に向ける。
…えっ?
『話があるから、いいかな?』
又、同じように先輩が”おいで”と招く。
「あ、はい…」
あたしは黒木雄大先輩に返事をする。
先輩はニコッと不敵な笑顔をして、教室を出た。
あたしは先輩の後ろに付いて行く。
でも、話といえば昨日見ていたかの話だろう。
きっと、怒っているだろうな…。
頭で"激怒"というのをイメージしながらあたしはぶるっと寒気がした。
すると、前の方に歩いている先輩から声が聞こえた。
『佐倉さん、一応言うけど話は昨日のことじゃないよ』
そう告げると、先へとぐんぐん歩いていく。
あたしは先輩の言葉に考えていたことがスルーと消えてほっと安心した。
優しいな…
心でボソッと呟きながらも先輩の居るところに急いで付いて行く。