「智樹ごめんね、ごめんね・・・っごめんね。」

母は謝り続けた。何故母が謝るのか・・・きっと智樹のことが可哀そうで虚しくて仕方なかったのだろう。

「・・・いいんだよ、もう。母さん、姉ちゃん、迷惑かけてごめん。でも、俺、なんとなくわかってた。自分はもうだめだってことも。」

「智樹・・・。」

私は智樹の名前を呼ぶことしか出来なかった。

智樹の立ち尽くす姿は、今でも脳裏に焼き付いている。

「それでね・・・智樹。これから治療をして、少しでも長くできるようにするか・・・それか、治療しないで・・・残りを・・・。」

母は言葉を詰まらせた。残りの命なんか・・・言えるわけがないから。

「・・・俺は、癌になって毎日不安な夜を送ってた。2人に心配かけちゃいけないって。」

智樹の目から、涙がこぼれ落ちた。