もう、やめて智樹。

これ以上そんな智樹の顔見たくない・・・。

「なぁ、姉ちゃん!!」

「だまってよっ!!」

2人の間に、沈黙が流れた。

「たしかに、智樹の為だよ、私が出ていくのは。でも、姉ちゃんの気持ちにもなってみてよ。弟助けたいって思うのが普通でしょ?」

智樹はうつむいたまま、口を開いた。

「でも・・・退学してまですることないじゃん。それに俺、姉ちゃんに迷惑かけられねぇ・・・」

何粒もの滴が智樹の足もとに落ちた。

「ごめんね。でも、姉ちゃん、智樹の為だけじゃないんだ。お母さんと一緒に住んでると、お母さんが不幸になっちゃうんだって。私、この家にいないほうがいいの」