でも、現実はそう甘くない。

智樹が治療をすると決めたら、早く手続きやお金の準備をしなくてはならない。

・・・問題は、お金だった。

うちは父が警察沙汰になることで、父は職を失っていた。失ってから専業主婦だった母も、働き始めた。

父が亡くなってある程度の保険が入ってきたが、今のうちにあるお金では、智樹に治療をさせることは厳しかった。いくら保険がきくといっても、金額はばかにならない。

「ねぇ、どうするの?お母さん。」

その日の夜、智樹が寝静まってから私と母で話し合った。

「わからない・・・でも、智樹のしたいことはやらせてあげないと・・・。」

母は髪をかきあげて頭を抱え込んだ。

でも、智樹に治療させることができる、唯一の方法が私にはあった。