『目を閉じるといつも舞華が浮かぶんだ……』



と、切ない声で智也君は呟く。



お兄ちゃん、お兄ちゃんって笑う顔。



お兄ちゃん、お兄ちゃんって怒る顔。



お兄ちゃん、お兄ちゃんって悲しそうな顔。



その舞華ちゃんのすべてが今も智也君の心の中に存在しているんだね。



「舞華の気持ちを…受け止める事なんて俺には出来ないって、俺は泣きじゃくる舞華に言った。普通にまた戻れるって思ってた。でもそんな簡単なものじゃなかったんだ。俺がもっときちんと向き合ってあげていれば…って」



「舞華ちゃんは…その時、何か言った?」



「いや…ひと言も…ただ頷くだけ。それ以来、俺には何も話さなくなったんだ」



お兄ちゃん、あたしを見て・・・・・。



あたしはこんなにも…こんなにも・・・・・



あふれるほどの好きでいっぱいだよ。



お兄ちゃんが好き…。



お兄ちゃんが好きでたまらない……。



受け止めてはもらえないその想いはきっと、舞華ちゃんの心の中からあふれ出しこぼれていったんだね。



あふれたその想いは舞華にとって、



ただ辛いだけの存在に思えてしまったのかもしれないね。