「琴弥だから言える。言えるって思った。ずっとこうやってそばにいたいんだ」



私を包む智也君の力が、ふうーと緩む。



「うん。だから…聞くよ。全部話して…ねっ」



私の言葉に小さく頷く智也君の腕は、ゆっくり私を解放していく。



そして再び話を続けていく。



「舞華は明るくて、いい子だった。本当の兄妹のようにさ、いつも冗談言ったり、ふざけたりさ…俺達はすぐ仲良くなった。でも…いつからか…あいつが俺を避けるようになって……」



私は黙って智也君を見つめたまま聞いていた。



「俺には訳が分かんなくて…どうしても理由を知りたくて、それで聞いたんだよ。あいつ…に…舞華にね」



「俺と目をあわせようとしないあいつに、聞いたんだ。今思うと何も理解してなかった…バカだったよ…俺」



会った事のない智也君の妹、舞華ちゃん。



何かに悩み苦しんで……



智也君はそれに気づき…きっと優しく聞いたんだね。



そしてその答えは…智也君の考えても想像もしていなかった事…。



「あいつは泣きながら…その答えを言ったんだ」



智也君の声が頼りなく小さくなる。