そんな思いでいる時だった。







ドスン…ガシャーン…



俺は何かに思い切りぶつかった。



「…えっ?」



「…ぃたぁ…」



目の前には転んだ自転車と女の子…。



女の子の表情は痛くて辛そうで、しかめた顔は青ざめている…。



事情はどうであれ、今のは明らかに俺が悪い。



「ごめん…いや…す、すいませんでした。怪我はしてませんか?」



慣れない敬語で聞く俺に、その女の子は顔をあげ、答えた。



「あ…はい。痛いけど…大丈夫…」



その言葉にほっとする俺。



「本当にごめんなさい。俺、ちょっと急いでて」



そうなんだ。俺は急いでいる。



こんな所でこんな事してられないんだ。



俺は早く舞華のもとへ行かなければならない。



女の子の怪我もひどくはなさそう…なら…なら…俺は今すぐまた急ぐべきだ…少しでも早く家に向かうべきなんだ…。



なのに俺はその場を離れないでいた。散らばってしまった女の子の荷物を拾っていく。



そのうち、女の子が俺の手の怪我に気づいた。



そして女の子に引き寄せられる俺の手…