いくつも信号無視を繰り返す………。



俺はかなり焦っていた。



途中の道の事はあまり覚えていない。



早く………急いで……もっと、もっと……。



車の大きなクラクションが耳に響く。



たぶんそんな俺に向けられたクラクションを何度も聞いたような気がする。



でも俺の意識はそんなのどうでもよくて……



ただひたすら…思うことは……早く…家に…。



会わなきゃ…舞華に…って、心の中で叫んでた。



泣きそうだった。



イヤ…もう泣いていたのかもしれない。



舞華の姿が俺の心の中に浮かんでは消え、浮かんでは消えていく。



早く…家に……。だから待ってろよ……。



涙がこみ上げてくるのが分かる。



泣きたくない。



約束したんだ…舞華との…約束。



だから俺は泣いちゃいけないんだ。



俺は泣いたりしないって、言ったから。



だから涙は大切にしろよって、言ったから。



その言葉に頷いた舞華を裏切ってしまうような気がしたから。