「な、泣いてるの??どしたぁ?俺、なんか言い方まずかった?」



智也君は慌ててたね。



ごめんね。智也君。



あの時まで私、自分にこんな涙があるなんて知らなかったんだよ。



そう、本当にね。



今まで誰にも必要とされた事なかったし、自分からも求めなかった。



だからそんな実感した事なかったから。



私が泣いてる。



涙がこんなにも新鮮で、こんなにも嬉しいなんてね。



それから色々な話をしたね。



学校の事、友達の事、部活の事、バイトの事…。



あんなに長く感じていた毎日が、



智也君の存在でいつも彩りを変えていくのが分かった。



家では相変わらず『違う自分』がいるけど、



そんなの苦痛には思えなくなっていた。



母は相変わらずそんな私の様子に気がつくわけでもなく、



家にいる時間も少なくなっていたけれど……。