「俺、行くわ」
親子の溝が埋まり、今まで離れていた分の母の愛情はぬくもりとして十分に得た。遥は満ち足りた笑顔でそう言った。

ゆっくりと立ち上がり、ずっと待っていてくれた刑事のもとへ向かう。
「刑事さん、俺は原千夏さんを拉致、二日間監禁し、ご両親に5000万の身代金を要求しました。逮捕してください」
「……浅井遥、拉致・監禁の容疑で逮捕する」
手錠をかけられ、遥はゆっくりと歩いていく。

「あ…遥さん!」
「…ん?」
優しい顔で振り返った。
「待ってますから…」
「うん、待ってて」
心配と寂しさで、千夏はとにかく不安そうな表情を浮かべている。
「原さんも、重要参考人及び、被害者として別の車で署にお越し願います」
「え…」
「あなたの証言次第で、彼の刑の重さがかわる事もあるんですよ」
「!」
刑事の優しい言葉の意味を理解すると、千夏は嬉しそうに笑った。

「私もご一緒致します。遥がこのような行動に出てしまったのは、私の原因でもありますので」
「母さん…千夏…」
「お願いします」
美和も同行を願い出た。

自分の犯した罪を少しでも軽くしようと、奮闘する母と千夏を見て遥の心は幸せに満ちた。
長い間服役することになったとしても、待っててくれる人達がいるとわかった今、どんなにつらい事でも頑張れる。
心からそう思った。

半分は人生を諦めた上で、復讐を計画した。でもこれは、神様がもう一度俺を立ち直らせるために必然的に作ってくれたチャンスだったのかもしれない──。