中学生の遥は、事故現場に行って、車種が特定できるようなものは落ちていないか、何か手がかりになるようなものはないか、テレビで得た知識だけで捜査を開始した…。

だが、素人の調査で犯人を捜すことなど不可能に近い。その上、ぶつかった時に壊れた車の破片など証拠品になるであろう物は、犯人の手によって隠されてしまったようで、くまなく探しても見つからなかった。

そんなある日の夜……

遥が帰路についた時、おでんの屋台が目についた。
おでん屋には、2人のスーツの男性が座っている。1人は30代後半ぐらいの男性、もう1人は明らかに大学生ぐらいの若者だ。

「でさぁ〜、俺酔っ払ったまま運転しちまってよぉ〜。そしたらぁ交差点で信号無視して女の子はねちゃったわけぇ〜」
「本当ですか!?…ヒックッ」
どうやらべろんべろんに酔っているらしく、中年男性の方がこんなことを言い始めた。

「いや、はねたっていってもぉ…ちょっと当たっただけだぜぇ〜?…ック! なんかねぇ〜小学生ぐらいのくせに、大人みてーな月のネックレスつけてたな〜〜」
「悪いですね〜、原先生も〜!」
「俺とお前だけの秘密だぜぇ」
酒をつぎたしながら下品な笑い声を上げる2人。
おでん屋の主人がトイレに行っている間に、こんな会話を堂々とするなど大胆このうえない。誰に聞かれているかもわからないのに、真っ赤な顔で高らかに笑う。

始めから終わりまで、遥は会話をしっかりと聞いていた。