朝早いこともあってか、コンビニには店員と遥しかいなかった。
一応のために帽子を深くかぶる。
顔を見られて、あとで警察の聞き込みなどで証言されたら厄介だ。

適当におにぎりやサンドイッチなどをかごに放り込む。
千夏をいつまで監禁するか決めてはいないが、もう少し一緒にいたいと思っている。
2日分ぐらいの食べ物を買う。ついでに千夏が好きそうな甘いお菓子も。

「ありがとうございましたー」
コンビニを出る。
千夏が待っている倉庫に向かう。
千夏が喜ぶ顔を想像すると、自然と小走りになった。

 *   *   *

コンビニの店員は、携帯電話でとある人物に電話をかけた。
「もしもし、原先生ですか?」
<ああ、俺だ>
電話の相手はなんと、千夏の父親だった。
「見つけました、月の形のネックレスをつけた男」
<本当か?>
「間違いありません。女物のネックレスでした」
<そうか…わかった>
「あの…それで…」
<ああ、心配しなくても約束通り金は渡す>
父の言葉を聞くと店員は電話を切る。あやしい笑みを浮かべた彼は、父親が教師として勤めている大学の生徒だった。


「くそ!!」
電話を受けた千夏の父は、携帯電話をベッドに叩きつけた。
「やはり浅井遥か……」
もしかすると今回千夏が連れ去られたのは、以前自分が犯した罪に関係しているのではないかという彼の推測は、先程の電話で裏付けられた。