人混みを通り抜けると…
鬼下刑事がいた。
この重々しい雰囲気は
相変わらず、空港に場違いで。
鬼下刑事の隣には━━━…
明るい表情をしている敬太がいた。
ジーンズに黒の長袖のシャツというラフな格好で。
「敬太…」
私は無意識のうちに
敬太に目を奪われていた。
ゴホンと咳払いをして
鬼下刑事は言う。
「健一郎さんなんだが。意識が戻ったそうだ。」
「…本当ですか!?」
私は鬼下刑事の顔を見る。
「健ちゃん!」
星斗君は大きくジャンプして喜んだ。
「まだ油断は出来ないようだがな。まぁ、大丈夫だろう。との事だ。
でだな。コイツに来てもらったのは…」
そう言って、鬼下刑事は
敬太の頭をぐしゃぐしゃにする。
「何すんの!」
敬太は嫌がりながら、
鬼下刑事の手を振り払った。
「健一郎さんと奈央子さんが戻ってくる間、星斗と一緒に暮らすんだとよ。」
鬼下刑事はサラリと言う。