「じゃあ、またな」と


いつもと同じ困った顔でいつもと同じセリフを言って帰っていく彼を見送り、ほっと息をつく。


マンションを出て、闇の中に消えていく背中を扉の影から見つめていると、じくじくと侵食するように傷が疼きだす。


それは、好きな人とバイバイしたばかりなのにすぐに会いたくなってしまうなんていう、かわいいものじゃない。


私と別れた彼が、またここに来てくれるのかという少しの不安の傍らで


私から離れられるわけがないという絶対的な自信が居座っている。


私から解放なんてしてやらない。


私から離れるなんて許さない。


未だに疼くその傷が、彼を私に縛り付ける。