苦しくて、居たたまれなくなって。


私は彼女から目を逸らした。


俯いて背中を向けたままの彼に背を向け、力を貯めるようにぐっと拳を握り締める。


「帰る。」


震えないようにと力を込めて発し声は、それでもやはり震えていて。


彼に気づかれたんじゃないかと不安になったが、振り向くことの方が怖くて逃げた。


来た道を引き返す間、涙が溢れて止まらなかった。


ぽろぽろと頬を伝って、綺麗に塞がっているはずの傷口にひりひり染みた。