2番街に入るなり私は周りの空気の差に息を呑んだ。

1番街を歩いている頃はさほど気にならなかった憲兵服を着た私達への視線…。

頑張って堂々としようと顔を上げるけれど、すぐに周りを見て俯いてしまった。

…顔が…上げられない。

何故なら、人々は私たちを好奇の目ではなく…明らかに軽蔑し避けているように睨んできたから。

その眼光が、怖くて仕方ない。


「身分の高い人達意外は…皆国を嫌っているのね…。」


私はすぐにそう悟った。
ハイネも感づいているのか…前を向いたまま何も言わない。

服の質も…活気も…1番街とは全く違った。
それなりに生活はできているのだろうが、彼らの視線は尋常なものではなく。

ひそひそと小声で何かを話す婦人達。
窓から私達を見つめる子ども。

商売を止め、あっちへ行けと言わんばかりに唾を吐き捨てる店の主人。

…怖い。
怖い…!

恐怖が私を襲う。

するとそんな時、ハイネが歩く速度を速めた。
どうやら彼も少々身の危険を感じたようで。


「なるべく早く店を探す。必ず日没までにな…。日没までに見つけられなかったら…俺達は地獄行きだ。」


そう言うなり人目も気にせず片っ端からハイネは手掛かりのブロックス通りの場所の聞き込みを始めた。
住民達は決して友好的では無かったが、道程度は教えてくれるらしい。
何度も何度も聞き込みを繰り返しては石畳の道を歩く。

だが2番街は予想以上に広く…情報は幾重にも交差し、捜索は困難を極めた。


「…、ハイネ…もう太陽が沈みかけているわ…」


もう歩き続けて何時間経っただろう。
海のある方向を見つめ私は小さく息を吐く。

…沈みかけた真っ赤な夕日。

朝から走ったり歩き続けている私の体力は、もう限界に近かった。

ちらほらと、家に明かりが灯り…街灯が温かな光を放ち始める。