―――…

ひとまず私達は扉を無理やりこじ開けて、店の中へお邪魔する事に。


「なぁフラン。これ、不法侵入って言うんだぜ。」


いっしっしと不気味な笑い声を上げながら楽しそうに笑うジィン。


「なら私が許可するわ。」


私はそんな彼女を一目見た後、店の中を大きく見渡した。


「…それにしても、酷い有様。」


荒れ果てた店内。
その光景は既に過去の面影が分からないほどだった。

散らばる椅子と机は幾重にも折られて。
以前ハイネが眠っていたカウンターは、切り傷だらけ。

歩く度に巻き上がる砂埃に顔を歪めながら、私達は次に2階へと足を運んだ。


「…?」


だが驚いた事に、2階はそれほど荒らされた形跡は無くて。
家具も扉も綺麗に閉じられ、目立つ外傷も無い。

どうやら王国騎士団が荒らした後…誰かが綺麗に片付けて行ったかのようだ。


「…で、なんかあった?」


すると面倒くさそうにしてソファーに腰掛けるジィン。
私は「いいえ」と首を振り、彼女の隣に腰をかけた。


「これからどうする?この分だと、案外間に合いそうだけど。…城まで行く?」


続けてジィンはそう言うけれど、


「…きっと上手く行かないわ。それに、今思えば…ハイネは何か企んでいるのかも知れない…。」


私の唸り声を聞いて、小さく息を吐いた。


「…まぁ、助けるとしたら処刑台まで彼が出てきてからの方が良いかもね。」


悪役も一緒に捕まえられそうだし。とブツブツ言っている内に…
よほど疲れていたのか、いつの間にか眠り込んでしまう彼女。