やがて日が傾き、段々と人通りが少なくなってきた頃。
「着いたよ。」
タリアの酒屋を見上げれば、見えたのは“エキドナ”と書かれた看板と…
「………。」
立ち入るなと言わんばかりに封鎖された扉。
エスタンシアの紋章が描かれた紙がいくつも貼ってあり…、人が住んでいる様子など微塵も無い。
私とジィンが店の前で立ち尽くしていると、ふいに後ろから声をかけられた。
「ここに何か用かい?」
慌てて振り返ると、そこには箒を持ったおばさんの姿が。
彼女はどうやら近くの家の人らしい。
「…えっと、あの、知り合いの人の…」
口ごもりながらも私がそう言うと、おばさんは大きく息を零した。
「ここの女店主は王国騎士団に連れて行かれちまったよ。」
「え?」
「いい人だったんだけどねぇ。」
それだけ言い残し、スタスタと立ち去ってしまう。
ぽつんと取り残されたような感覚に襲われて、涙が出そうになったけど…
「また泣いてんの?」
というジィンの問いに私は、
「泣いて、ないわ…!」
唇を噛み締めて…夕日を見つめた。