そしてやっとオーダ河を渡った昼下がり時。

私はジィンに尋ねた。


「2番街のブロックス通り3-24に行けるかしら…?」


「え、は?なんだって?」


「2番街のブロックス通り3-24。城から逃げた時に、私達を匿ってくれた人が経営している酒屋なの。」


そう言えば、うーんと唸るジィン。


「別に行けない事も無いけど…、ただ道が狭いから馬は無理だね。」


…馬は無理。


「それに早くしないと…。」


確かに早くしなければ城には間に合わないかもしれない。
でも、タリアの安否も気になる。


「大丈夫、少し見るだけだから。お願いよ。」


だが私がそう懇願すると、ジィンは分かったよと行って馬から下りた。
そして近くの木の幹に手綱を括りつけ歩き出す。


「アタシも滅多な事がない限り2番街には来ないからさ…。道間違えても怒らないでくれよ。」


「少しなら私も分かるから大丈夫。」


沢山の人が行き交う2番街。

だけど私を知るものはいなくて。
所詮名ばかりの女王だものと私は何度も思った。

それに今となっては王族の証すらない。


即ち、私は他の人となんら変わりは無いのだ。


でも…、今まで経験してきた事は明らかに違った。
故に女王としての責任があり、使命がある。

誇りまでは捨ててはいけない。


私は人ごみに紛れながらもたった一人心に杭を打つ。