「――こんな感じでいいですか?」



回想を遮断し、適当に埋めた批評用紙を差し出す。


向かい側のソファに腰掛ける担当は身を乗り出して受け取ると、みるみる口を尖らせた。


「”相手役の女の子が可愛いと思いました”って……、これじゃ感想じゃーん!もっと先輩っぽいこと書いて欲しいんだけどなぁ」


「じゃあ宮城野さんが直し入れて下さい」


「もぉ~。実際一行くらいしか使わないからいいんだけどさぁ」


そう言って担当は他の批評用紙も確認すると、呆れたような、諦めに近い表情を上塗りしていった。



私はいろんな意味で批評が苦手だ。


立場的な問題もあるし、ドの付く新人とは言えなくとも、見る目もまだまだ肥えていない。


それに仮に酷評したり、上から目線のアドバイスをして、その作家があっけなく自分を通り越したら、あまりにも惨め過ぎる。



そして苦手な理由の比重は、主に後者に偏っているのも認める。