とにかく、懐が広いのを誇示したいのか何なのかあまりにもムカついたので、

ふざけて宇宙規模のシリアス展開が売りのコメディーといっためちゃくちゃな企画を送ってやったら(非常に不本意であるが)、さすがにそれは首を捻られたけど。


けど、それでもあからさまな否定はされなかった。


閑話休題。


何はともあれ受賞作である。


今回は準入選が一作、佳作が二作、奨励賞が一作の計四作が受賞、うち佳作以上の三作がデビューとなった。


これら受賞作は自宅にコピーが送られてきて、目は既に通し終えている。


そして数千の応募から潜り抜けた秀作として誌面で知らされるこれらとはまた別に、今回は異例の特別枠が設けられていて、


受賞はさせずに応募作の同水準、もしくはそれ以上の新作が出来たらという条件付きでのデビュー者が一名、後付で決められたらしい。


それが先ほど読んでいた作品だ。


大まかに言えば、両親との溝を深める孤独な少年が、ある日突然暖かい家庭を手にするという話である。


これと言った努力もなしに夢を手にするご都合主義に眉を潜めたくなったけれど、最後の最後の話のひっくり返し方は秀逸とは言えなくとも、興味深くはあった。


両親の優しさの裏には、無理心中を目論む狂気が潜んでいたのである。


話は、少年がデパートの屋上階からアスファルトへ叩きつけられた場面で終わっている、何とも後味の悪い作品。


けれど何気ない伏線を散りばめながら、のったりと語りつくした末に、急激な加速で狂気と崩壊の狭間を突き抜けるその作風は、一時期の私自身の状況と似通ったものがあった。