――山崎。



前の前の担当の名前である。


最後まで、本当に嫌な奴だった。



じゃあ自分で書けと言いたくなる程の作品への干渉に加え、持ち掛けられたアイディアが、他の新人の盗作だったという始末。


連載が決まった直後に訪れた編集部で、その新人が押しかけていた噂を聞いたのだ。


その後即効に担当変えを申し出たけれど、今思っても、胃が捩(よじ)れそうなほどの腹立たしさに全身が焦がされる。



山崎は私ではなく、その新人のアイディアを評価したわけだから。



ちなみに次の河野という担当は、そいつはそいつでやりにくかった。


作家主体主義を貫くあまり、自由が利き過ぎるのである。


私は自分の書きたいものを基軸に読者の、編集部の求めるものを交えて、


すなわち主観と客観を適度に織り交ぜてこそ、傑作は生まれると思っている。


なのにあいつは、どんな試作も文句一つ垂らさなかった。


言い方を変えれば、ダメ出しはするけど、主観的な意見がほとんど無いのだ。



私は自分の欲求を満たすためだけに作家をやってる訳ではないというのに。