「かがみん、どう~?」


平均よりややこじんまりとした印象を与える女性が視界に入り、ついでにお茶が差し出される。


新担当こと宮城野(みやぎの)なずなである。


担当の問いかけに首を傾げながら、手にしていた原稿をソファに放り、喉を潤す。


物で溢れているのに、どこか閑散としている編集部。


世間では赤色で記される日付の今日、新人賞の選考委員として私はここに来ていた。


――と言っても、受賞が決まった作品に無難なコメントを残すだけの仕事なんだけれど。


鶏からは卵が産まれ最終的には鶏へとなるのに、作家からは作家も卵も生まれないのだ。


影響を与える事は出来るけど、直接的な生みの親、育ての親となるのは編集者なのである。


もっとも、原理でなく仕組みを考えれば何の不思議もない事だけど。