台所につくと、早和は俺を引っ張っていた手を離し、テーブルの上に置いてあった何かを後ろ手に隠した。
「あのね?きょうはね、はろうぃーんのひなの」
「ハロウィーン…?」
「うんっ!だからね、あきらくん「とりっくおあとりーと」っていって?」
あぁ、なるほど。
だからか。
その可愛い要求に、クスリと笑って答える。
「トリックオアトリート、早和ちゃん」
「えへへ~♪はいっ!」
嬉しそうな笑顔とともに差し出された両手の上には、可愛くラッピングされた透明な袋があった。
その中には、小さな一口サイズの黄色いクッキーがいくつか入っている。
「…ありがとう。これ、早和ちゃんが作ったの?」
「うんっ!かおりさんといっしょに!!」
「そっか。ありがとう」
「あのね、かぼちゃのくっきーなの」
キラキラと光る瞳が、「食べて食べて」と無言の訴えをしてくる。
その瞳に負けて、俺はカサカサと袋を開け、クッキーをひとつ口に放り込んだ。
「…おいしい」
「わぁっ!やったぁ!!」
頬を赤く染めてニコニコと笑う早和が、すごく可愛い。
早和がくれたクッキーをもうひとつ袋から出して早和の口に入れると、早和は嬉しそうに微笑んだ―――………。