「…早和ちゃん?大丈夫…?」


体の向きを変えて早和と向き合うようにし、カタカタと震える背中を撫で続ける。

しばらくすると、震えがおさまってきた。


「…あきら、くん…」

「ん?」


そろそろと顔上げて、俺を下からのぞきこむ早和。

俺はできるだけ優しい声でそれに応え、早和の頭を安心させるように撫でた。

…今、思えば。

あれが、早和と俺の今の関係の原点かもしれない。






「「ただいまー」」


それからしばらくして2人で俺の家の門をくぐると、母さんが駆け寄ってきた。


「早和ちゃん!明!!無事ね?良かった…」

「…遅くなって、ごめんなさい」

「ごめんなさい」

「いいのよ。なかなか帰ってこないから心配したけど…2人が無事でよかったわ」


ほっとした風な母さんのあたたかい出迎えに、安堵する。

小さな声で俺のあとに続いて「ごめんなさい」と言った早和も、ほっとした様子だった。


「…あの、あのねっ…」

「…ん?…あぁ。アレね?早和ちゃん」

「うんっ」


ふと気がついた様子で、母さんに必死に何かを伝えようとしていた早和は、母さんが了解したように頷いたのを見て、ぴょこんと跳ねた。


「台所のテーブルに置いているわよ」

「ありがとうっ!」


ぱぁぁっと花の咲くような笑顔を見せて母さんにお礼を言った早和は、俺の手を引っ張って台所に連れていった。


「早和ちゃん…?どうしたの?」

「あのね、あきらくん」

「うん?」