《な…に…!?》


俺が目を真っ直ぐにとらえて言った言葉に、目を見開く黒いモノ。


《お…まえ…!なにものだ…!?》


その言葉に、クスリと笑う。

小さな頃から。

本当に、小さな頃から厳しい親父の修業を受けてきただけあって、この頃から術を使うことには多少慣れていた。

あのくらいの妖怪は、倒せないとおかしい。


「俺の名前…知らないの?」


しょうがないな、という風に息を吐いて妖怪を見やる。

そして、ニヤリと笑ってみせた。


「俺の名前は…陽碧明…って、いうんだよ」

《ひ、陽碧…!?お前、まさか…!!》

「あれ?やっぱり知ってるの?」

《ひ、陽碧一族の…後継…!!》

「…正解」


だけど、今更わかってももう遅い。

俺の術から必死で抜け出そうともがくが…そんなことでやぶれる程やわなものはかけていない。

俺がそのまま印を結ぶと、妖怪が「ヒッ」と小さく悲鳴を上げた。


「…百鬼破刃」

《うぎゃぁぁぁぁっ!!》


俺が放った術が、光の刃となって妖怪に降り注いだ。

刃をもろにくらった妖怪が上げた悲鳴に反応して、カタカタと震えだす俺の後ろの小さな影。

…怖い思いは、これ以上させたくない。


「…ごめんね。時間が無いから」

《うっ…ま、待ってくれ!!やめ…》

「微塵となりて退散せよ、急急如律令―――!」

《――――――――――!!!》


妖怪は、声にならない叫びをあげて消えていった。

その瞬間、早和が俺の体に腕をまわして、ギュッと抱きついて来た。