「あのねぇ?あきらくん、きょうがなんのひかしってる?」

「今日…?」


10月31日。

考えても、何の日かこの時の俺にはわからなかった。

この時はHalloweenだなんてこれっぽっちも思いつかなかったし。

首をかしげて考えていると、早和がクスッと笑った。


「きょうはね…」


早和が、言いかけた時。


《おぉ…うまそうな子供が二人もいるぞ…》


突然、声が聞こえた。

その瞬間、早和がビクリと身を固くするのが伝わる。

慌てて辺りを見回すと、近くの家の塀に座ってこちらを見下ろしている影を見つけた。

その黒いモノが放つ妖気が、辺りに充満し始める。


「あ、あきらくん…」


怯えて俺の手をギュッと握る早和の手を、俺の服へと移させて、ポンポンと頭を撫でた。


「大丈夫だよ。おれが絶対に守ってあげるから」


幼いながらに、この子にだけは手を出させないと強く思った。

どうしても、この小さな、大切な女の子だけは守りたくて………。

この時はまだ、これがなんて言う気持ちなのかなんてわかってはいなかったけれど。

それに俺が気がつくのは、もっと後の話だ。


《こんな所でこんなに力がある子供に出会えるなんてなぁ…オレは幸運だ》


俺達には何も抵抗なんてできないだろうと油断している妖怪。

その様子を見て、俺はニヤリと笑った。


「…風縛」


小さく唱えた瞬間、その場の空気がピシリと固まるのがわかった。

早和もそれを感じたのか、服を握る手に力が入る。


《な、なんだ!?》


突然のことに、何が起こったのかわからない様子の妖怪。

小さな声で唱えたから、聞こえなかったようだ。


「…そんなに簡単に、やられると思う?」