12月25日。

クリスマス当日。


イルミネーション街の広場にあるひときわ大きなクリスマスツリーの前でちらっと時計を確認する。


「おっそいなー明(あきら)。もう1時間の遅刻だぜ」
「………」


右隣から少々困ったような声がする。

そして左隣からは何も聞こえず、ただタンタンタンと靴のつま先が地面をたたく音だけがする。

それが逆に恐ろしかったりするんだけど。

とは怖くて言えない。


「明、はやく来ないかな…」

小さく呟いたのに、両隣の二人には聞こえてしまったらしく、タンタンタンという音が更に大きくなり、右からは気使うような声がした。


「早和(さわ)ちゃん、やっぱ心配?」


心配じゃないといえばウソになる。


「心配だけど…。でも、明ならきっと来るから」

「…うん。俺もそう思う」


右隣でにこっと渉(わたる)くんが微笑んで、左からは結希(ゆき)ちゃんの手がポンポンっと私の頭をなでた。





「悪い!遅れた!」

「おっそーーーいっ!」


数分後、息を切らした明が私達の前に走り込んできた。


結希ちゃんがここぞとばかりに今までためていた文句を吐き出す。


「あんたね〜、どれだけ遅れたと思ってるの!連絡の一つくらいよこしなさい!」


「そうだそうだ。女の子泣かしてんじゃねーよ」


渉くんがちらっとこっちを見ながらふざけたように言う。


渉くん!よ、余計な事を!


案の定、明が私が涙目になっている事に気が付く。


「えぇっ!どうしたんだよ早和!あ、俺がいなくて寂しかったとか?」


最初はびっくりしてたくせに、ふとニヤリと笑っていつものような言葉をかけてくる。


そんな明を見ていたらなんだか安心しちゃって、目の表面にたまっていた涙がポロポロと流れ出した。