「どんな美女見ても、イイカラダの女に誘われても。千咲よりもいい女だと思えない。だから、」
“変わらなくていいし、頑張る必要もない。俺のすきな千咲のまま、ただ隣で笑っててくれれば、それでいい”
そう言って、あたしの顔や頬をなぞる。
信じられないくらい、優しい指と優しい笑顔で。
涙でぐしゃぐしゃのあたしの顔は、きっと史上最強に不細工なんだろうけど、それでも礼は。
『可愛い』と言ってくれるんだろう。
不意に膝立ちになって礼の首に腕を絡めて、抱きついた。
しっかりと受け止めてくれたことに安堵したのか、また泣きそうになる。
「――礼。…礼、だいすき」
耳元で、そう呟いた。
消え入りそうなくらい小さな声だったけど、絶対に礼には届いたはず。
一瞬驚いたような顔を見せたあと、この上なく優しく微笑んでくれたから。
「知ってる」
あまりに礼らしい答えに笑いそうになったけど、それを声に出すことは叶わなかった。
唇を塞がれたんだもの。仕方がない。
某ベルギー産チョコなんかよりも、よっぽど甘くて糖分過多な礼のキス。
その依存性は、ニコチンやドラッグを優に越えているに違いない。
――あぁ、そうだ。
あたしたちは一週間もの間、こうしてキスをしていなかったんだっけ。
すでに二人の距離は0だというのに。
“もっと”と、さらに深く唇を重ねた。