そばにいて。
離れていかないで。

素直になんて、とても言えないけど。
ちっぽけな、でもなにより大事なあたしのたったひとつの願いなの。


なんの取り柄もないあたしが、自分に自信を持つなんて、そんな簡単にできることじゃないけど。
礼のことがすきだってことだけは、だれにも負けない自信がある。

それでいいじゃないか。

だってどうせあたしは礼と離れられない。
今までどれだけ不安でも、だれになにを言われたって側にいたのは、礼と離れること以上につらいことなんてないって思ったから。



零れてしまった涙を受け止めたのは、やっぱり礼のヒートテックだった。
礼の匂いと温度、その存在に安堵して。
いっそう涙が溢れたのは言うまでもない。

「――ごめん、ちー…」

静かにそれだけ呟いて、またぎゅっと抱きしめる。


「蘭のことだけじゃくて、いろいろ不安にさせてたのも分かってた。ちーが信用してないからなんて思ってないよ。あの日言い過ぎたのは俺の方」

“ごめん”

だから、違うんだってば。
礼はなんにも悪くない。
あたしが勝手に不安になってただけだ。